すでに、ハロウィン用の撮影会をしてしまったために、二度目のハロウィンという気もするのだが、今日がハロウィン当日。
撮影ではないので、女装用の長髪ウィッグもなければスカートもはかない。その代わりショートパンツとオーバーニーソックスで黒猫の衣装だ。あんまり女装ばかりしていては、新しく弟となったロロに姉だと間違われてしまうのではないか、という危険性も若干あった。
猫耳と猫尻尾、首輪もつければ完了。
「今日は僕が襲撃するターンだな」
ニヤリと、邪悪な笑みを浮かべる。
悪戯の方法は108通りほど、考え済みである。
イベント好きの肉親の事、よもやお菓子を忘れているとは思えないが、もしもの時のために考えておくにこしたことはない。
あとは・・・・まさか、とは思うがアレも用意しておくか。と、貰ったお菓子を入れるためのバスケットに仕込んでおくことにした。
「ナナリー、ロロ。二人とも用意は出来たかい?」
ナナリーはピンク色のふわっとしたワンピースに蝶の羽の妖精。ロロは水色のスモックと半ズボンに透明なトンボの羽の妖精。
「うん、・・・・兄さん」
「お兄様、今日は女の子の格好じゃないんですね?」
「営業用じゃないからな。身内にだけだから、これで十分だろう?」
「ええ、とっても可愛らしいですわ。ね、ロロお兄様」
「うん。すっごく似合ってます」
「ありがとう。じゃ、行こうか。今日は一杯お菓子を貰って、悪戯をしような♪」
「「はいっ」」
どこから襲撃しようかと考えながら歩いていると。
「お兄様、ジェレミアさんを発見しました♪ 捕捉しますっ。」
「あ、ナナリー・・待って・・・」
と、物凄い勢いで突撃していくナナリーとそれを追いかけるロロ。
息切れしながら追いかけていくと、すでに二人はジェレミア卿を取り囲み、お決まりのセリフを口にしていた。
「「トリック・オア・トリート!!」」
「トリック・・・・ああ、ハロウィンでしたね。」
「そうです、ジェレミア卿。お菓子をくれないと悪戯しますよ。」
黒猫さんは、先ほど息切れしてたのなんて忘れたふりで、ニヤリとしてみせた。
「お菓子はないのですが、先ほど頂いたオレンジなら・・・」
「オレンジ?」
「お兄様、オレンジはお菓子に入りますか? 入りませんか?」
「オレンジを材料にお菓子は作れるけど・・・・・、現段階ではお菓子ではないな。というわけで・・・・二人とも、くすぐりの刑を実行するぞっ!!」
「うわ・・・・殿下・・・ちょっとまっ・・・あ・・・ひゃあ・・・ダメ・・・・」
笑いすぎてヘタリ込むオレンジ君を放置。一応、オレンジは戦利品として貰っていく。
「よし、オレンジ君は完了、次行くぞ、次っ」
「次の犠牲者は誰でしょうね?」
「ハロウィンて、楽しいね」
ジェレミア卿はすっかりオレンジ君で定着したようだ。
続く
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